設立記念シンポジウム パネルディスカッション発言要旨

~ひらかた環境ネットワーク会議に期待すること~

(谷﨑氏)
市内でボランティアをしていますが、市民だけでする活動の限界というか、もうひとつ壁を破れないものを感じていました。みんなと議論してみたいと思って参加しました。

(丸井氏)
2月号の広報の座談会のことを思い出していただきたいんですが、いろんな取り組みをしてみても全市的には壁があって、広がりが見られず、大きな力となっていきません。こうした時に環境ネットワークが立ち上がると聞いて、是非参加しようと思いました。

(三好氏)
事業者としての係わりは、環境にどのような取り組みをしているか、安全な商品をより安く提供する使命がある反面、過去のもの作りは安くて利益の出るものを供給していくということで、最終的にどう処分されるかは、あまり考えませんでした。現在消費者はそういうことは受け入れてくれません。設計から次の段階の配置されるところまで、全てを見越していかなければ消費者から見放されます。リサイクルできる商品が求められますが、高くつきます。ごみの排出も、事業系ごみは行政が関知せず、収集業者に委託契約しています。お金がかかるので、少しでも少なくしたいですから、分別回収したり、最終的にゼロエミッション:ごみを出さない形に変わってきています。ごみをださないことは、会社が利益を上げることですから真剣に取り組んでいます。環境問題についても平成5年、会社の全壁面に太陽電池パネルを張り付けました。CO2年間排出量を1.2~1.3トン下げ、社会貢献しています。企業は儲けにならないことにお金を出しません。未来型・分散型エネルギーをめざします。
「北大阪エコエネルギープロジェクト」を産官学協働で4月5日に発足させますが、ひらかた環境ネットワーク会議と共存しながら活動できればと思っています。

(新開氏)
これだけの方が集まっておられることが、明るいスタートになります。少しでも先行組織としてお役に立てればと思います。’96年5月、行政からの呼びかけで150団体が集まり、まずワーキング会議を立ち上げ、月1回どういうことをしていくか会合を持って、互いに自己紹介とどんな活動をしていくかを数ヶ月繰り返しました。何をやっていいかわからないところからスタートし、バタバタした時間が費やされましたが、このことが後日、相手を十分知り合う熟成の期間となり、活動を支えてくれました。ワーキンググループ会議で、シンポジウム・学習会・見学会等考え付く色んなことをしました。
現在パートナーシップとか協働は当たり前に使われていますが、’96年ごろは、市民・行政にもそういう考え方で進めていこうということがなく、自分たちの住む町を環境の切り口の中でどう考えたら良いのだろうと思っており、非常に苦労しました。市の部長さんと話したときに『行政マンは苦労した』とおっしゃるので『市民も我慢した。』と答えました。
市民会議のもうひとつの目的は、豊中アジェンダ21を作ることでした。自然・生活・産業・交通の4部会を作って、私は生活部会で、環境家計簿を作りました。つけやすく続けやすいのはどんなのか、色々考え出来上がりましたが、担当職員からイラストにジェンダーの視点が入っていないからダメだと言われ、改めてパートナーシップとは何かを考えました。大変難しい事ですが、一緒にやるだけでなく立場の違いを認めあうこと、そして理解して共通の目標に向かって一緒にやっていくことだと思いました。行政の下請けになっているつもりもありませんでした。本当に大事なのは信頼しあう事でしょうか。時間とエネルギーが必要です。互いに立場の違う者が協働していきますから、いろんな齟齬や行き違いがあるかもしれませんが、”信頼”をキーワードにしていかなければなりません。ネットワーク会議は、プラス面を引き出しマイナス面を補い合って、より大きな可能性を見出せまた多様な取り組みも可能です。

(中司市長)
この会議には、担当部署外の職員や議員も多数参加しています。設立にご尽力いただいた皆さんに改めて感謝申し上げます。
枚方市を『全国一の環境保全都市と呼ばれる町にしたい』という強い想いを持つ中で、環境行政に取り組んできました。人口急増と共に年々ごみの排出量が増え、穂谷川現清掃工場がパンク寸前ということで、建て替えて第二清掃工場をつくらなければなりません。これに対するごみ清掃工場建設反対運動が大きなキッカケでした。反対している東部氷室地域の方々と何回も話し合い、ごみは40万市民全ての問題で、責任と痛みを分かち合わねばなりません。共有する問題であると強く感じ、焼却ごみの半減を公約としました。建設を予定している東部の里山保全や自然環境も、出来る限り守っていこうとしました。処理炉のトン数も極力抑え、環境面で世界最高水準のものをつくります。並行して、燃やすごみ以外にも生ごみの堆肥化、バイオマスの活用を将来導入したいと思って検討に入っています。エネルギー・まち美化・グリーンコンシューマー運動・子供たちへの環境教育・公共交通利用の促進・環境家計簿の配布等先行都市の例を学び、行政でやれることは何でもやっていこうという姿勢で進めてきました。市民・事業者と一緒にやっていかなければ限界があります。 一人ひとりが変わらなければならないとの姿勢が不可欠と感じました。市民の環境意識は高いです。市民団体が環境をテーマに活動しています。事業者も進んだノウハウを持っておられます。これらは市の財産であり、生かしていかなくてはなりません。豊中市の取り組みも参考にネットワークを作っていこうと進めてきましたが、市も深く関わっていきます。
大きなパワー、新しい可能性が開けると期待を寄せていますが、そのためには行政も意識を高めていかなければなりません。平成13年にISO14001を認証取得し、CO2やエネルギー削減など市役所のエコオフィスを進めてきた過程で、職員の意識も変わってきました。16年度、17年度にかけて市の事業を、環境の観点から検証する仕組み「環境会計」を導入していくなど、環境の視点を市のあらゆる施策に向けていきたいと思います。植田先生の話にありましたように、まさに環境ネットワークは、タテ割りでない意識を持って社会をヨコにつなぐもので、その想いを行政内部でも持っていかなければなりません。全国一環境意識の高いオンリーワンの環境保全都市をめざしていきたいと思っています。

(谷﨑氏)
行政とボランティアの違いについて触れておきたいと思います。市民は純粋な思いでお手伝い・ボランティアしていますが、行政は給料を貰っています、ボランティアでやらんかいと言われる方がいらっしゃいますが、まさにここが環境ネットワーク会議の今までと違うところです。ボランティアなら無償ですが下りることができます。しかし行政は仕事として環境を考えますから抜けたり、逃れられません。もし役所の人がボランティアで参加したら、何の力も権限も無い一市民となってしまいます。権限も予算もついてくる力を持った行政の人が参加していることに意味があります。
事業者も環境で儲かっているという話が出ましたが、まさにそこに事業者の参加する機会があります。環境をビジネスとして成り立つ形を考えたいと思います。三者三様の特徴を生かしながらやるのが新しいと、お考え頂きたいです。特徴を生かす反面、制約を持ちながら参加していることを互いに理解することが、キーワードとなっていることに思い至りました。
市民の想いでここまで来れたと思います。出来たから終わりではなく、ずっと続けていかなければなりません。会社でもトップの意志で良くも悪くもなるように、市長の想いが続かなければ、この活動もしぼんでいきます。市長本気やな、ということを確認したいと思います。

(丸井氏)
信頼・規範・ネットワークはすぐ作れるものではなく、長いスパンの中で力を付けていくものです。今の想いを2年後3年後までずっと持ち続けて、全国一の環境保全都市を目指したいという市長の熱い想いに、私たち市民として応えていきたいと思っています。

<会場フロアからのご意見、ご質問>
(K氏;羽曳野市)
議員の方も参加していると聞いていますが、市議会の関わり方や立場はどうなっているのでしょうか。また議員がどういう風にすれば、このように上手くいけるのかの参考としてお聞きしたいです。

(S氏;楠葉)
ひとつのことをやる場合に、違う立場の者の信頼関係が大切で、会社で仕事をする場合も同じです。信頼を得ることが大変難しいとのお話がありましたが、新開さんに、どういう事例があったかお聞きしたいです。

(O氏;楠葉)
伏見区で、京エコロジーの環境ボランティアをしています。地元枚方で活動が始まることにすごい期待感があります。いろんな方の話や市長の熱い想いを感じていますが、具体的に何が出来るかが大事で、みなさんと考えていきたいと思います。

(T氏;長尾西)
こうした会議を何年か続けていくと、成果がきっちりと出てくるものですが、仕掛けを作った市では、何年か先に評価するようなもの、たとえばごみが半減化するというようなものがあるのですか。 立ち上げたから市の大きな目的は達成したではなく、長期的に考えた場合、日本一の環境都市を目指すといってもどんな中身なのかちょっと引っかかっています。中身がハッキリしないと、針路がもうちょっとわからないなあとなります。

(F氏;牧野)
留守家庭児童会の仕事を21年続けてきて、1~4年生の子供の環境が随分変わってきました。自然環境もそうですが、ヒューマンネットワークというか人と人のつながりが希薄になってきています。子供たちの遊ぶところがありません。コンビニの前とかでなく、公園や子供たちが安心して遊べる場所、交通対策も含め、子どもたちが育っていける環境に関しても発言していきたいと思って、参加しました。

(Y氏;養父丘)
三好さんから、『企業もエコロジーを考えて製品を作るようになってきましたが、相当の実力がないと企業競争に打ち勝てず、一般の消費者と同じ』との指摘がありましたが、この場合企業に責任があるのではなく、消費者=市民に責任があると思います。
商品が安いから飛びつくのでなく、最後まで処理されていくアトのことを考えて、コストが高くなることに、消費者が理解を示さなければいけないと思います。また学校教育だけでなく市民教育もどのように取り上げていけば良いか、市民に理解・説得していく場所・方法・あり方を、この会議でも取り上げて他部門に先駆けて、教育サポート部会がリードする形で進めていけばよいのではないでしょうか。事務局には生活環境課だけでなく教育委員会も参加して、立案の過程で教育の場でも通るような案を作り上げ、実行していく形にして頂ければ、また私たちも努力していきたいと思います。

(T氏;杉山手)
先生の目線だけでなく、市民から見る環境教育もあります。森をきれいにする等、市民が講師として子供たちに語り合う、或いは根付かせていく場があったらなあということの提案をさせいただきました。

<会場フロアからのご意見、ご質問に対するパネリストのコメント>
(新開氏)
信頼を得るとはどういうことかとのお尋ねですが、市の事業を市民が請け負い頒布するプロジェクトとして、生ごみを堆肥化したいとのグループがありまして、市役所・企業の食堂から出る生ごみや公園・街路樹の剪定枝のチップ化したものを、どう混ぜれば良いか、3年かかりました。そこまできちんとしたものが作れるんだったらということで、行政は市の事業として、学校給食の残飯と剪定枝を混ぜる工場を作ってくれました。お互い信頼に値する行為があったからだと思います。環境という切り口から、町をどうにかしたい、市民として担いたいという熱い想い、評論家でなく実際に動くこと、それが信頼に繋がるのではないかと思います。

(三好氏)
環境商品を傍らから見るとわりと儲かっているなあと思われますが、中身は儲かりません。むしろ持ち出しです。このコップを10年間補償しろ、メッキしてもっと美しくしろと言われても、非常に特殊な技術を使っているため、リサイクルは高くつきます。むしろ廃棄した方が良いのです。10年先にリサイクルされていいものであれば、それで良いじゃないかとお客から声がかかりました。そういう方との出会いをこうした会を通して増やしていきたいと思います。

(中司市長)
会場に議会からも沢山来られています。環境施策に力を入れることは、議会の協力がなければ出来ません。たとえばISO14001(2年間の準備期間を経て平成13年認証取得)は、議会からの提案の中で取り組んできたもので、議会と行政の両輪で施策を遂行していくその中で、今日のネットワーク会議が出来上がったとご理解いただきたいと思います。
平成16年度の予算を決める議会が3月1日から始まる中で、環境問題についての質疑がかなり出されるだろうと思っています。行政としてもきちんと説明責任を果たし、そして市民に公表していきます。私の想いとして、枚方市の環境保全というのは一人ひとりが環境意識に目覚めた環境保全都市にしていくことが大切だと思っています。どれだけ多くの市民がこの取り組みに参加していただけるか、一人ひとりの意識が変わっていくのか、大切に大事にしていきたいと思います。
何が日本一なのか適切な評価をしていくのは非常に難しいですが、それぞれの分野で市民参加で評価していく仕組みをみなさんと考えていきます。ネットワークによりどう変わっていくのか、枚方市の環境施策はどうなのかを評価していくことが必要で、これから一緒に考えさせていただきたいと思います。
焼却ごみの半減についても平成11年から10年間で半減したいと進めていますが、厳しいです。数字上は全体で15%の削減しか出来ておらず、更に取り組みを進めていかなければ達成できません。ネットワーク会議の中でも見直していただき、取り組みを強化して、少なくとも8割の市民の方に協力いただかなければ達成できません。当然市も努力していきますが、市民の方のご協力もお願いしたいと思います。
環境教育も大事で、昨年より子供たちの体験プログラムをあらゆる分野で実施しています。市民が講師として体験・取り組み状況の話をしていただいて、具体的にやっていくことが大事です。今後もご協力いただいて子供たちに伝えていき、その仕組みを教育委員会と協力してつくっていきます。

(丸井氏)
子供を取り巻く環境の問題はどういうところでやるのとか言われていましたが、どこでかなという問題は、全てまちづくり部会が受け皿でやるという、固い決意で臨んでおられるようなので、是非参加してください。

(谷﨑氏)
市民教育も大事というご提案につきましては、まったくそのとおりだと思います。本日参加されている方々には、教育の必要はありません。参加して現場を見る、或いは環境を考え議論していただくことが教育だと思います。多くの方に参加していただいて、現実の課題を直視し、現場を見れば何とかしなければならないという気持ちになります。
枚方市は結構レベルの高い方が居られる町だと思いますが、大学もたくさんあり、若い人もたくさんいます。そういう意味で市民の力を活かしていきたいです。これからの活動は、目線を合わせて進め、とにかく参加したら楽しいという場をつくっていきたいと思います。
5部会と準備会でキッカケを作りましたが、3人がそろってこういうことをやろうという合意提案をいただければ、新しい部会を作ってもらえるようになっています。活動の中でコアになる人が3人以上いれば、こういうことをやりたいとの提案をどんどんしてもらえばと思います。枚方市を良くしたいという人の集まりですから、楽しくなければ意味がありません。

(植田コーディネーター)
何かこれだけは?という方はおられませんか。最後に一言ずつ決意或いはメッセージを!

(新開氏)
パートナーシップを築くには時間がかかると思います。その過程は非常に面白いものです。自分たちが計画立案し、政策に反映できればしめたものです。今日ここに来させていただけることをうれしく思いました。 パートナーシップの組織がいろんなところで出来、それが広がって深まっていくことで、豊中と交流させていただきたいと思いました。ありがとうございました。

(三好氏)
環境商品は高価なものとなり、手に入りにくいです。北大阪のエコプロジェクトを立ち上げています。市内で是非お買い求めいただきたいと思います。そうすれば事業者は社員を幸せにして、納税できます。

(丸井氏)
企業はコストという明確な目的意識があります。市民の場合は何が何でも枚方の環境を良くするぞという、決意があれば前進するかなと思います。会場の中で、行動を起こしていく決意表明のようなものがありましたが、私もここでヤルゾという決意表明をしたいと思います。頑張りましょう!

(中司市長)
協働が非常に難しいという話が再々ありましたが、行政の立場を守りながら、市民・事業者の目線、想いを踏まえて、肌で感じながらやっていきたいと思います。
先ほど会長から本気でやるのかと問いかけがありましたが、勿論本気で取り組んでいきますのでよろしく。

(植田コーディネーター)
環境ネットワークに期待する、ふさわしいシンポジウムが出来たと思います。 何をもって成功したといえるか、との難しい質問もありましたが、逆に何が成果かを皆で考えながらいくのがネットワークです。見えるような成果、たとえばごみが半減するとかだけじゃなく、見えない信頼とかものすごく大事なものが、多分、成果として現れてきます。作っていくプロセス自体が大変大きな意味を持っています。 それ自身が成果になりうるもの、結果を見るだけでなく、プロセスを大事にしていかないといけません。主体的に関わる人の増えること自体が大きな成果といえます。